「冒険投資家ジム・ロジャーズ世界バイク紀行」

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前書き
これは「冒険投資家ジム・ロジャーズ世界バイク紀行」の感想です。ジム・ロジャーズはジョージ・ソロスと国際投資会社クォンタム・ファンドを設立し、10年で4,000%を超えるリターンを実現した天才投資家だそうです。ジムと人生のパートナー、タバサは1990年3月25日アイルランド西端のダンキンをスタートし、1991年11月中旬ニューヨークに戻ったそうです。世界一周に1年8か月くらいかかったようです。ジム・ロジャーズに興味ある人はもう読んでいるだろうし、まだ読んでない人には30年前の出来事について読む価値があるかどうかわかりません。今の世界情勢は当時と全然違うだろうし、今ジムとほぼ同じルートで世界一周をしたとしても同じような結果が得られるかわかりません。

ジムの投資に対する考え方
ジムは1980年にクォンタム・ファンドを去り仕事を引退しているようです。世界一周はジムがすでに巨額の富を築き、時間に縛られることがないから可能だったようです。世界一周の途中でバイクの部品が必要になっても、ニューヨークのジムの事務所に電話して部品を送ってもらえたのも大きいようです。ジムの世界一周旅行が普通と違うのは、世界の国々への株式投資も兼ねているということです。訪れた国でリターンが得られると確信したらその国の地元最大手の銀行、証券取引所で優良な株を買っているようです。巻末の解説によると、ジムのプライオリティは、一番目が殺されないこと、二番目が人生を楽しむこと、三番目が世界を知ることだそうです。殺されないことが一番目のプライオリティなのに世界の国々に実際に行って株を買うのは、相当な現地現物主義だと思いました。自分の目で現地を確認しているから確信を持って投資できたのでしょう。この冒険の最大の山がニューヨークの事務所に電話してサリーというアルバイトと話した時というのは皮肉でした。巨額の富を持ちながら一瞬にして破産してしまう可能性があるのは恐ろしい世界だと思いました。他人に自分のお金を管理してもらうことの恐ろしさがわかりました。ジムは株の価格は需要と供給で決まると考えているようです。金(ゴールド)も例外ではないそうです。ジムの投資スタイルは長期投資のようです。株の価値に対して安ければ買い、天井になる前に売り抜けてるようです。ジムでさえ短期投資をあまりしないということは、短期投資は相当難しいのでしょう。また、ジムは土地を一切買わなかったそうです。売りたいときにすぐ売ることができるものしか投資しない方針だからだそうです。また、ジムの投資のルールは小額から始めること、取引する銀行が米国に支店を持っていることだそうです。取引相手を簡単には信用しないようです。またジムは為替が投資のためにわざわざその国を駆け回る価値があるかどうかを教えてくれると書いています。例えば、公式レートで1ドル5ズロチ、ヤミで10や15ズロチならその国は政府が崩壊の危機にたたされているか、すぐ傍まで超インフレが忍び寄っていることを教えてくれるそうです。つまり、ジムは通貨が実際の交換で安すぎる国は投資する価値があるとは考えていないようです。政府は為替を操作して自国の通貨を安くしたり高くしたりするのではなくで、財政の健全化や経済の発展に寄与することで自国の通貨の価格を高めることが望ましいと考えているようです。また、ジムはほとんどの投資家がおかす大きなミスのひとつは、常に待機資金を投資しなければと思っていることだそうです。投資のコツはいかにして金を失わないかということにあるのだそうです。
複利こそが投資の力なのだそうです。つまり、高いリターンを出すことより大きな損失を出さないことが重要なようです。ジムのようにすでに巨額の富を築いていたら0リターンで全然問題ないということになります。結果的に高いリターンを得られたとしても巨額の損失を可能性として秘めている投資先は投資対象としてはふさわしいとはいえないといえるかもしれません。

感想
 ジムの投資に対する考え方はとても勉強になります。ただし、ジムは自分の発言が社会に与える影響を十分に理解して発言しているようなので、ジムの発言を額面通り受け取るのは危険なようです。中国株の長期投資を表明しながらその前に中国の保有株を高値で売り抜けていたこともあったようです。ジムがどう発言したかよりもどう行動しているかの方に注目すべきなようです。またこれまでジムが正しかったからといってこれからも正しいという保障はないので、ジムの発言、行動を鵜呑みにするのではなく、リスク分散、致命的損失は避けるなどの防衛策は必要なようです。

参考文献 「冒険投資家ジム・ロジャーズ世界バイク紀行」 ジム・ロジャーズ
      林康史+林則行=訳